【第737回】山本正典(コトリ会議)

福岡キビる舞台芸術祭「キビるフェス2025」より今回は『コトリ会議』の山本正典さん(劇作家/演出家/俳優)の登場です!

5年ぶりの福岡公演によせて、山本さんよりお届けする"オモテの話"と"ウラの話"

山本さんの頭の中がほんの少しのぞけちゃうかも!?

観に行く予定の方も、これからの方も、気になっていた方も、初めて知った方も。

前回の『コトリ会議』若旦那家康さんの インタビューも併せて是非一読くださいませ ♪


福岡公演によせて

 2018年のきびるフェスの時に、コトリ会議は初めて福岡県で公演しました。その時とても印象に残ったことがあって、僕たちの公演を観終わって、お客様がでてきて、皆さんとても朗らかに「わからなかったー!」って仰るんです。それで僕は「むきー」とはならずに、「そのとおり!」って心の中で喝采したんです。

 だって僕もそう、きっとコトリ会議を観たら「わからなかったー!」って言うんです。台本を書いてる僕だって「なんでこの登場人物はこんなことを言ってしまったの?」って錯乱しながら筆を進めているのだから、そう、わからないはずなんです。これはなにも、共感も理解も得られない作品をつくれと言ってるんじゃないんです。お客様に観て欲しくて作ったんだから、お客様に受け取ってほしいのです。受け取ってもらうための工夫と努力はとても大切です。

 でもなにを受け取ってほしいのだろう。

 僕は、コトリ会議の作品の説明を求められる度に困ってしまいます。主題が自分でもわかっていないからです。

 もちろん、受け取る受け取らないの前に、めっちゃ褒められたいし、ちやほやされたい。だけれどコトリ会議って、あんまりちやほやされたことない…(でもこの前、関西で表彰されました。ここでだけ自慢させてください、関西で自慢したら煙たがられるし)。褒められたいのなら、もっと共感してもらえるような工夫をすればいいんじゃないかな。でも僕たちの顔は真っ直ぐに虚無の彼方へ向けられている、共感の地平からそそぐ光を背に抱き…。

 きっと、褒められたいだけでない、なにかを求めて僕たちは作品を発表し続けるのでしょう。(すごく当たり前のことを言っていないか?)そのなにかがわからない限り、僕たちはカーテンコールで「え?これで終わりなの?パラパラパラ…」みたいな拍手をいただき続けるのでしょう。

 これからコトリ会議をご覧いただく皆様へ。

 「おかえりなさせませんなさい」はきっと、あなたに「なぜ?!」をたくさん突きつけてくるでしょう。一つの「なぜ?!」に捉われてはいけません。なぜなら一つを解決している間に、次から次へと「なぜ?!」が降り積もり、次第に舞台上で俳優の吐く台詞が日本語とは思えないようになって、さいごにはあなた自身が大切な何かを吐瀉(としゃ)してしまうことになるからです。

 どうか健やかな心を保ち、一つに捉われず全体を観終えてください。きっとあなたはちんぷんかんぷんでしょう。人は皆「わかりたい」生き物。こんなことをお客様にお願いするのは残酷なことだってわかっています。でもわかっていないから上演するんです。でもきっと皆「もう少しわかりやすくしてもいいのにな」って切実に念じているはずなんです。でもわかっていないから上演するんです。

 乗り越えてください。

 そして観終えた後に盛大に、「わからなかったー!」と叫んでください。(どうか笑顔で…)福岡のお客様ならそれが出来るはずです。僕はそれがとても楽しみです。

 楽しみです!

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 おもての話は以上です。

 ここからはうらの話です。(うらの話といっても悪口は書いてないよ)

 このコラムにはお題があって、「山本が最近興味あること」なのですが、僕には僕が最近なにに興味があるのかすらわかっていないので、あ、わかっていないことを書こうと思って今筆を進めているのです。(でもいざ自身の興味について問われると迷いませんか?皆さんも考えてみてください。)

 話題を遡って。

 作品の主題って、難しいですよね。

 なにが難しいって、言い切らなきゃいけないのが難しい。主題は「愛」です。とか言ってしまうと、すごく壮大な反面ものすごく陳腐に思えるし…。

 その悩みってきっと、作り手の皆さん共有出来るものですよね。でもわからないところから、きちんと自分の言葉にして説明出来るからすごい人はすごい。僕はそこの努力を怠っているのです。「自分たちの作品、わからないです」なんて、とても簡単に言えてしまって、僕はここまでいろいろ書いておきながら恥ずかしい、今更ながら。恥ずかしくって、「違うんだよ、わからないですっていうのは、なんていうかこう、一周二周まわってきてのソレなんだよ」っていう風に皆に思ってもらえないかなあって、そんなところでくよくよ悩んでるから40歳になっても未だに四字熟語も使えない平坦な文章しか書けないのです。

 お客様がわからないと思われる原因て、大雑把に二つありますよね。「作者がなにを考えているのかわからない」と「登場人物がなにを考えてるのかわからない」。もっとあったらごめんなさい。

 世に言う、うまい劇作家は、この「登場人物がなにを考えてるのかわからない」を使いこなすから上手なんですよね。一方、山本は自分の考えも適当なので、「作者がなにを考えているのか自分でもわかっていない」に当てはまるから厄介。やっかい。僕も持て余す。

 別にコンセプチュアル・アートを目指しているわけでもないから、コトリ会議は「印象派」です、印象演劇。(印象派をよく知らないけれど)もう、観たままの、そのままの美です。

 深い意味なんて持たないようにしているつもりだけれど、でも人間って、生き続けるだけで深いから。持ってしまうんですよね、深い意味を。

 だからこのコラムもね、まとまらなくてもいいでしょう。深いのだから。

 ここまで読んでくださりありがとうございました。失礼しました。


コトリ会議 山本正典


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コトリ会議『第 69 回戯曲岸田國士戯曲賞』最終候補作品、さらに『関西えんげき大賞』にて”最優秀作品賞”と”観客投票ベストワン賞”のダブル受賞を成し遂げた、コトリ会議による 2 年ぶりの長編新作公演「おかえりなさせませんなさい」。

話題の本作を福岡で観れる機会です!! お見逃しなく!!

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コトリ会議「おかえりなさせませんなさい」

第八次半世界大戦が勃発している中、燕と人間を合体させた超生物「ヒューマンツバメ」が誕生していた。ヒューマンツバメは空と陸を謳歌し、争いの連鎖から解き放たれようとしていた。ただ、彼らは超生物ゆえに、子どもを産めない。先へ先へ、身体を改造するしかない物になってしまった…。

とある喫茶店である家族が集まっていた。長女の夫に国防軍への招集令状が届いたのだ。「ヒューマンツバメになれば徴兵は免れる」ただし、ヒューマンツバメになるという事は、人間の記憶をほとんど失くすという事だった。

家族のそれぞれが大切な人のことを思い選んでいく物語の結末とは?

日程▶3月14日(金)~16日(日)

会場▶なみきスクエア 大練習室

詳細はこちらから▶https://kibirufes-fuk.localinfo.jp/posts/55854772

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