今回は福岡キビる舞台芸術祭「キビるフェス2025」参加団体、『コトリ会議』の若旦那家康さん(制作/俳優)にお話を伺いました!!
関西を拠点に活動するコトリ会議による 2 年ぶりの長編新作公演「おかえりなさせませんなさい」。
伊丹での初演を終え、『第 69 回戯曲岸田國士戯曲賞』最終候補作品、さらに『関西えんげき大賞』にて”最優秀作品賞”と”観客投票ベストワン賞”のダブル受賞を成し遂げた本作を、3月14日(金)~16日(日)の3日間、なみきスクエアにて上演します。
コトリ会議さんの作風についてや創作についてのあれこれ、今作品についてのあれこれ、福岡についてのあれこれ、、、などなどたっぷりと語っていただいてます。
是非ご一読ください~♪
(※『関西えんげき大賞』インタビュー時は優秀作品賞の10作品に選出。その後”最優秀作品賞”と”観客投票ベストワン賞”を受賞されました。)
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コトリ会議さんの作品は、SF的な要素が入って世界観が壮大だけど観ていると不思議と違和感なく世界に入り込んでいるというようなお話をよく耳にします。コトリ会議さんの作風について教えてください。
そうですね。今回の作品「おかえりなさせませんなさい」の前、去年の3月に上演した「雨降りのヌエ」という作品の設定は現代から100年後の未来でした。今回も今から100年後です。でも実は100年後ってそんなに遠くなくって、近い未来でのSFなんです。“身近だけど今じゃない”っていうことにした方が色々なクッションがあるので。SF的な要素に関してはSFといっても例えばスターウォーズのような壮大ものではないんです。現実を描くことのショッキングさみたいなのってやっぱりあって、それよりも絵空事ですよとした方がしっくりきやすいというのがある。今回の作品には出てこないんですけど宇宙人とか死んだ人の存在とか、現実に生きている人以外の者や、犬とか動物もそうなんですけど、それらと会話をしたり、、、っていうのを現代でやるよりもちょっとずらした別次元でやった方がすんなりいく。「そんなことないでしょ」とは言い切れないくらいのところにしようというのが気持ちとしてありますね。
壮大な、地球が滅亡するみたいな設定もあったし、今回でいえば第八次半世界大戦勃発しているとか。物語の外側で起きていることは壮大だったりするんですけど、でもその中で家族とかパートナーとか、それぞれの個人事、世界は大きい中で大変なことになっている中におかれる個人の想いみたいな、普段の自分達とは変わらない普通の人たちの物語を描いている。壮大な設定の中のちっぽけなお話を描いているっていう感じですかね。
世界観は確かに壮大なんだけど、全く無いとはいいきれない世界観の中で描かれていて、自分の身の周りでも起きそうなことだからこそ、観た時に違和感なく入ってくるのかもしれないですね。
今回の作品には“ヒューマンツバメ”というのが出てきます。過去にも単純に頭にはえているアンテナをゴムひもで止めているだけで宇宙人にしたりしてて、ヒューマンツバメもリアルに作るっていうよりもそのチープさとかも含めて作りものですよっていうことをあえて見せている感じはすごくしますね。
今回、既に伊丹での公演を終えられているということで、感想や舞台写真などを拝見させていただきました。ちょっとチープなビジュアルのツバメが舞台上に居て可愛らしかったりするんですけど、皆さんの感想は“泣きました”とか“考えさせられました”という感想がとても多かったです。ビジュアルがあんなにチープだったとしても、これだけ人の心を打っているということは、例えばこれが直接的にもっと違う表現であったならばちょっと受け取るものが大きくて受け止めきれない方もいたのかもしれない。ある意味“優しい描き方“をされてるんだろうなという気がしました。
多分そうだと思います。僕は作家の山本君をすごく優しい人だなと思っていて。辛いことを辛いと書かないことの優しさがある。恋人とかパートナーだったりとか家族とか、自分が身近で大切だと思っている人が死んでしまうとか、変わってしまう、去ってしまう。物理的な別れもそうですし、今回の作品だと“ヒューマンツバメ”っていう別の生物に変わってしまうというような、大切な人がいなくなることのしんどさみたいなものをテーマとしてずっと書いていると思うんですけど、それを直接的に描いても観る人もしんどいだけだろう、と。
死んだ人と生きている人が同じ空間にいるみたいなことは結構昔からやっていてある意味お能とかに近いという言われ方をしたりもします。最初はチープだし、言葉とか台詞のやり取りも面白かったり、クスクスとした笑いが起きるようには描いている。別次元の事で描いてはいるけど、誰かに感情移入した時に、胸につまされるものとかがあったりするのかな。
コトリ会議さんの過去作品を観たことのある方に聞くと皆さん口を揃えて「上手く説明はできないんだけどおもしろいよ」と言われます笑 説明は難しいけど、とにかく面白いから。とにかく面白いし、是非観てもらいたいとすごくお勧めされました笑 今回の作品は既に伊丹での公演を終えられていますね。
地球上で起きている戦争のことを背景に書いてるんですけど、現実の方がひどい状態になっていって、作家はだいぶ苦しんで書いたみたいです。山本くんは1人で書いて稽古場でまず身内が面白がってほしいみたいなところがあるんですけど、ここ2~3年はみんなで真剣に意見を言い合って面白いものに創作していくみたいになっています。それでも山本君のカラーみたいなものはどんなに周りが手を加えても消えない。今回の作品はみんなで話し合った結果、稽古場で練りあがっていって、やっている最中から手ごたえがありましたね。
コトリ会議は東京にも劇団員がいるので今回は、10月中は関西に居る劇団員だけでまず稽古をして、東京の人たちが本番の2、3週間前に合流してきた時には関西のメンバーだけのシーンは出来上がっている、という感じでスケジュールを組んで作っていきました。演劇って1ヶ月も2か月も作っているとなんか面白さが膠着してきちゃったりとかするじゃないですか。でもこうやって段階を踏むことで、フレッシュな気分で面白いということをちゃんと感じながら作れたところがあります。
いつもはそういう創り方はされていなかったんですか?
そうですね。いつもはぎりぎりまで書き換えたりもしていて。ツアーとかだと、劇団員は普段働いているので連続して旅公演には行かずにひと月に1カ所まわるという形でやっているんですが、例えば関西で公演やって次福岡にいくぞってなっている間に今まではすごく書き直したりとかもしていたんです。時間が足りずに描ききれてなかった部分とか、ここ意味がわからないってめっちゃいわれたな、という部分とか。もともとわかりやすいようには作っていないんですけど、あまりにも伝わってないな、という部分を書き直して稽古をしたり。でも今回は、公演の間が3ヶ月も空いているのにほぼ書き直しはなし。山本君も事前に書き切れたっていう気持ちになったんじゃないですかね。
2年ぶりの長編新作なんですよね。また新たな進め方が見つかった感じでしょうか。
そうですね。おかげさまで色々なところに呼んでもらえて、コロナ期間中もコンスタントに年に1本くらいは公演をやっていたんです。ただ、そうやって進んでいく中でちょっと休みたいという話が出てきて、それから1年ほどお休みしたので、今回2年ぶりの長編新作になりました。前作「雨降りのヌエ」は短編5本の公演だったので。
5本なんですね。大変そうですけど面白い企画ですね。
そうなんです4本書き下ろしの、お兄ちゃんが死んでしまったお話。4人の兄弟それぞれの視点からお兄ちゃんが死んだときのことを描く2人芝居で30ステージ、3月の1日から31日まで劇場にいました。僕以外のみんなは仕事休めないとかいろいろあったのでシフトを組んで4つの短編のうち2本が観れるという形で組んでいきました。全員でやる作品も1本欲しいねっていうことで、全員出演するために昔やった作品を改訂した短編1本を併せて全5本。
大変でしたけど、僕は楽しかったです笑
お客さんも絶対楽しかったと思いますけど。全作品観たくなっちゃう仕組みですね。
5本あるので、すべて観る場合は絶対一本は同じ作品を観ないといけない。なので、全部観た人には特典として書き下ろしの兄弟の前日譚とカレンダーをつけていました。
この企画は若旦那さんが考えられたんですか?
僕がこんなのどう?って出した案にみんながいろんな意見を言ったりしてそれぞれの意見を取り入れていって進めました。“それ面白いね”“それならば公演と公演の間はこうしよう”みたいな。コトリ会議は東京にも2人劇団員がいるので稽古や本番のスケジュールも打合せしながら調整していく感じでした。
調整も大変ですね。すごく面白い企画だなと思うんですけど、でも面白い企画って絶対同じくらい大変さが出てくるじゃないですか。大変だけど、面白い方を取るっていうのは素敵ですね笑
そうですね。その時は、お客さんから「こんなおかしな計画を一緒にやってくれる劇団員がいて幸せだね」って言われました笑 大変だっていうことに対して、ストッパーになる発言をしてくれる人もいるんですけど、結果面白そうだなと思って劇団員やスタッフもみんな乗っかってくれるので。
劇団員の仲の良さみたいなものは写真からも伝わってきます。 伊丹公演を終えて次に福岡公演ということで3か月間があいていますが、稽古も特にはされていないんですか?
移動する1週間前から稽古の予定です。稽古して一緒に関西から移動ですね。先日読み合わせをオンラインでやったんですけど、その時にやりだしたら意外と思い出せるけどやっぱり忘れてんなーみたいなことになってました笑
また新鮮な気持ちで作品に向かえる感じがしますね。先ほどお話の中で、今回の作品は伊丹の初演の時点で完成された手ごたえがあったといわれていましたが、その作品を福岡で上演することについてはどうでしょうか?
『おかえりなさせませんなさい』は、もともと関西の“アイホール”という劇場が閉館してしまうのに合わせて最後にもう一回アイホールでやりましょうよ、と持ちかけたのがきっかけでスタートした作品です。そもそもアイホールに向けて描いた作品ではあるんですけど、その後キビるフェスへのお話もいただいて。福岡から声がかかってるけど皆行きたいかー?と劇団員に聞いたら「いきたーい!」と笑。それで、了解でーす!と。その時点で12月にアイホールでやった作品をもっていこうということになりました。描く段階で伊丹公演と福岡公演を視野に入れていたので、アイホールで観た方は、アイホールに向けて描いた印象を持たれると思うんですけど、福岡に行ったとしても通じる作品になるように描かれていると思います。
福岡での公演は5年ぶりですよね。
ですね。2018年にキビるフェスに参加させていただいて、キビるフェスの帰りに久留米シティプラザの方から電話をいただいて。それで、“来年久留米シティプラザに来ませんか?”て言われていますけどみんなどうします?みたいな笑そんな流れで2019年に久留米で公演して以来ですね。
繋がりますね~。コトリ会議さん、“一度やった土地には必ず戻ります”ということを公言されていますよね。
そうですね。そういうこともよく言ってますね笑 1度行っただけだと、例えば真裏で公演やイベント、お仕事なんかをされている人たちは当然見逃しますし、観に来てすごく好きだと思ってもらえた方からしても2年ぐらい間があくと忘れ去られるな、という感覚があって。なので、一度行ったら翌年も、もう一回行く。一年で戻ってくるっていうことをやっていかないと、せっかく好きだと思ってくれた人に忘れられたくないな、って笑
公演の話からは少し離れますが、福岡に来るのに楽しみなことってありますか?
食ですよね、やっぱり。あと、福岡は街のサイズが大きすぎなくていいですよね。東京は演劇がいっぱいあって楽しいんですけど福岡は他のカルチャーも含めて街全体が楽しい。
ぎゅっとしている感じはありますね。あと福岡県民としては、とにかく美味しいものをたくさん食べて帰ってもらいたいな、と思っています。今回はゆっくりできる時間とかはあるんですか?
みんなで美術館を回ろうかという話をしています。
是非、福岡を堪能して帰ってもらえたらと思います!!
最後になりましたが、今作「おかえりなさせませんなさい」、第69回岸田國士戯曲賞の最終選考に残りましたね。おめでとうございます。
戯曲賞の審査会がちょうど福岡公演の仕込みの日なんですよね。翌日どんなテンションで僕たちは芝居をするのかなって話をしています笑 取れても取れなくても台本自体が楽しいので、物語を楽しんでもらいたいなと思っています。実はもう一つ、「関西えんげき大賞」っていうまだできて3回目の賞があるんですが、今作品が優秀作品賞の10作品に選ばれました。その中からさらに「最優秀作品賞」と「観客投票ベストワン賞」(観客投票者による投票が最多だった作品)が選出される予定です。“戯曲賞”みたいに戯曲が褒められるのはもちろん嬉しいんですけど、関西えんげき大賞は“上演作品”に賞をあげるというものなんです。まだ3回目の開催だし、関西拠点の劇団への賞なのであまり広まってはいないかもしれないですけど、俳優もスタッフワークも含めてこの上演がよかったということを評価されたというのはすごく嬉しくて。山本君だけが評価されている、本だけが評価されているわけではないっていうこと自体がすごく良いな、と。今回福岡公演は5年ぶりになりますけど5年前よりもちゃんと成長しているんだなって思ってもらえるといいなと思います。
これまで劇団で積み重ねてきたことの結果として生まれた作品で今回岸田國士戯曲賞の最終候補作品になったこと、関西えんげき大賞の優秀賞に選ばれたこと、きっとそういうタイミングだったのかもしれないですね。
関西にOMS戯曲賞っていうのがあるんですが、山本が2年連続佳作だったけど3年目に大賞を頂いたことがありまして、その作品が久留米で上演した作品なので福岡は縁起がいいんじゃないのかなと思っています笑
それはとっても嬉しいです笑
僕らは東へ東へツアーに行くことは多いんですが、関西より西に行くことって今のところ福岡だけなんですよね。なので、故郷に帰ったような気分で向かいたいと思っています笑 以前何かにも書いたんですけど、「おかえりなさせませんなさい」って、おかえりなさいって言えませんけど言いたいみたいな意味で、アイホールっていう僕らのホームだと思っている劇場がもうなくなっておかえりとはいえないんですよっていうものだったんですけど、僕らは福岡におかえりって言ってもらえるように向かうっていうタイトルに、今はなっています。
このタイトルってちょっと切ないですよね。「言語感覚」問う部分で質問ですが、作品にわりと造語や擬音が出てくると伺いました。
台本自体に句読点がなくて、かわりにスペースがあるんですよね。一言でいうことじゃないこととかもツラツラツラーっと書かれているし、「?」なのか「!」なのかとかも全部ついていないんです。劇団員とかは一読してなんとなくそれなりの雰囲気で読めるんですけど、読み慣れていない人はどう読んだらいいのかわからないっていうのは結構あって。今劇団員になっている大石丈太郎さんがまだ客演で初めて読み合わせをした時に「なんで劇団員の人たちはこれをスラスラ読めるんだろう」とか、「もう音だけで面白い」というようなことを言われていました。俳句じゃないですけどわりとリズムを気にして台本を書いています。
ずっと一緒に創作しているからこそそのリズムがわかるんですね。
僕らはそれに慣れてしまっているから気づかないですけど、以前ワークショップをやった時に、初めて読む人は全然リズムが違うんだなーと改めて思いましたね。
それがコトリ会議さんのカラーになっているんですね。観た方が言われる「他にはない」という部分にそれも繋がるのかもしれないですね。きっと違和感なく観れるんでしょうけど、その部分も楽しみにしています。
「ヒューマンツバメ」の恰好とか、あまりにも幼稚すぎて舞台写真でも未だ出してないんですけど。“なんだその衣装は”とか、“そんなチープな作りでヒューマンツバメって”とかってなると思うんですけど笑 結構序盤で出てきてしまうんで、出オチっぽいけれど、でもそのうちに、その形に違和感がなくなるっていう。
違和感がなくなるってやっぱりすごいですね。そもそも、ヒューマンツバメっていう名前が名前ですしね笑 それでも、最後は胸がギュッとなるんじゃないのかな。3月の公演、楽しみにお待ちしています!
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コトリ会議「おかえりなさせませんなさい」
第八次半世界大戦が勃発している中、燕と人間を合体させた超生物「ヒューマンツバメ」が誕生していた。ヒューマンツバメは空と陸を謳歌し、争いの連鎖から解き放たれようとしていた。ただ、彼らは超生物ゆえに、子どもを産めない。先へ先へ、身体を改造するしかない物になってしまった…。
とある喫茶店である家族が集まっていた。長女の夫に国防軍への招集令状が届いたのだ。「ヒューマンツバメになれば徴兵は免れる」ただし、ヒューマンツバメになるという事は、人間の記憶をほとんど失くすという事だった。
家族のそれぞれが大切な人のことを思い選んでいく物語の結末とは?
日程▶3月14日(金)~16日(日)
会場▶なみきスクエア 大練習室
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