【第610回】若宮ハル(若宮計画 劇作家・演出家)/ 若宮計画 第7計画「We want to bake scallops for tomorrow.」

夜、一睡も出来ず朝を迎えてしまいました。
今日は若宮計画第7計画、We want to bake scallops for tomorrow. の初めての対面稽古があります。これまではずっとリモートで稽古をしていました。
本番前日寝付けない、ということはあっても稽古初日前にこんなことになっているのは初めてで動揺しています。

今回、この第7計画を上演すると、今年だけでも4つの物語を様々な形で上演したことになります。

これまでは年に2回上演すればいい方でしたので、これはかなりのハイペースと言えます。
と、言うと「コロナに負けずに」みたいに取って下さるもいるかもしれません、が、実際はコロナに関係なく、演劇以外できることがなくなってしまった、というのが正しい理由です。

というのも、私は去年からゆるやかに、なにもできなくなっていました。
3年近く続けていたバイトを辞め、知人や友人からのラインや電話を取れない日が続きました。
外に出るどころか、風呂に入れない日はいまだにあります。
こんな状態ですので、現在大学は休学しています。

「コロナ鬱」という言葉がありますが、後々、どうやら私の精神状態とコロナはあまり関係ないであろうということが判明しました。
私は、コロナ渦に、コロナに関係なく、何も出来ない人間になってしまったのです。

何も出来ない、と言いましたが、何故か、本当に何故か演劇だけはできました。
演劇をすることがその時の私に残された唯一の社会との繋がりだったからでしょうか。
不思議と稽古がある日には(遅刻をしてしまう時もありましたが)風呂に入り、服を着替え、外に出れたのです。
今考えると、もし私に「演劇」という手段がなかったら…と怖くなります。

しかし演劇ができるからといって不安がなくなるわけではなく、ぼんやりとした焦りが常にあります。
SNSを開くと、同年代の友達は学校に行ったり、バイトに勤しんだりしているので尚更です。
ステイホームと言われる中でも、本来学生である私が引きこもっていることは一般的に不健全であり、褒められたことではないのです。
そしてある日ふと「そうだよな、コロナがあってもなくても、生活は続いてしまうしな。」と思いました。

確かにコロナは生活に大きな影響を与えていて、私もコロナが怖いです。
でも、そもそもコロナがあってもなくても、生活の中には苦しいことや悲しいこと、勿論嬉しいこともあってそして、人は死んでしまいます。
コロナによって加速された死や苦しみ、悲しみはあったかもしれませんが、それそのものは初めから生活の中にあったのです。
なにを当たり前のことを、と思われるかもしれませんが、私にはとても衝撃的な発見だったのです。

なのでいつか、「コロナのある生活の演劇」をしてみたいと思っていました。
「コロナをテーマにした演劇」ではなく「コロナのある生活の演劇」です。
そして、今回、それをします。

とても、とても緊張しています。
今回役者を引き受けてくれたお2人の掛け合い、息遣いは、リモート稽古でも分かるぐらいとても素敵です。
高校時代、恩師からかけてもらった言葉の中でも「舞台がうまく行ったら役者のおかげ、いかなかったら演出のせい。」という言葉が私は一番好きです。
今日は特にその言葉が頭の中にリフレインしています。
なのでこんなにソワソワしてしまっているのでしょうか。
一睡もできませんでしたが、悪い気分ではないのです。

もしお気持ちが向いたのであれば、屋上でお待ちしています。
当日、晴れることを願って。

2021.9.23



若宮計画 第7計画
We want to bake scallops for tomorrow.

作・演出
若宮ハル

出演
德岡希和
西覚

日時
9月24日 17:30
9月25日 11:00 14:00 17:30

場所
枝光アイアンシアター屋上

料金
一律1000円

予約フォーム
https://forms.gle/xDsuVUvST5nnTfub8

お問い合わせ
wakamiyakeikaku@gmail.com

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