【第558回】荒木宏志(劇団ヒロシ軍主宰)

「こんな状況下でも演劇がやりたいんだ」

いきなり初っ端、悲しい話になります。2020年は毎月公演をやる予定でした。だけど、コロナのせいでそれも叶わなくなりました。4月5月6月と公演中止なりました。客演も何もかも中止。悲しくてやるせなくて、涙も出ないです。でも、それは僕だけじゃなくて全国どこの劇団・劇場もことごとく公演中止に追い込まれました。それだけでも精神的、経営的にきついのに、ネット上で演劇・劇場を守るための寄付を募る。それに対して、演劇は不要不急だなどと心ない言葉が飛び交う。どこもかしこも本当に苦しい状況。そんなことはわかってる。それなのにどうして言い合わなくちゃいけないのか?ネットって嫌

だなぁ、人間って嫌だなぁと思った。

4月6日の真夜中にTwitterで「演劇人で何かリレー出来ないかなぁ」と言う呟きに対して、すぐに反応を示したのが熊本のテル氏。「戯曲リレーやりましょう」と言ったのは愛知の刈馬カオスさん。北海道の上田くん、広島の武田さん、大分のルーシーが即反応した。

気付けば、真夜中にも関わらず、即LINEグループつくって話し合って、12時間後には47都道府県戯曲リレーをやるということで募集をかけた。プロアマ年齢ジャンル問わず誰彼構わず募集した。そしたら、1日で一気に30県集まった。全然知らない人ばかり。それでも、みんなただただ演劇が好きで楽しそうだから参加してくれたんだなぁと感動した。嫌だなぁと思ってたネットに、たくさんの出会いに感謝した。

4月14日から「だれかれかまわず」1ページ目を僕が担当して、あれよあれよと話はめちゃくちゃになりながらも繋がっていき、気付けば47ページ目を愛知の刈馬カオスさんが書き上げた。47人で1つの戯曲を作り上げるなんてこと、今までの演劇界にあったでしょうか?それだけでも充分、演劇だ。

7月4日にオンラインリーディングが配信される。今回参加した劇作家たちからの推薦でキャストを決めました。魅力ある役者さんたちばかり。主役を務めさせていただきました。あの鴻上尚史さんが特別出演していただけるなんて。今回のコロナ禍でなければ絶対にこうはなってなかった。だからって、コロナに感謝なんて絶対にしないけど。

ありがたいことに、この47都道府県戯曲リレーのことで、いろんな新聞社やテレビ局からの取材の話が来る。だけど、僕はどうでもいいことはペラペラ喋れるが本質的なことをなかなか上手く喋れない。ある新聞社の方から「この47都道府県戯曲リレーを通して、みなさんに何を伝えたいですか?」と聞かれ「え・・・あ・・・え?えっと・・・」と口ごもっていたら「それでも僕たちは演劇をやるよということですかね?」と言われ、それだと思い「はい。そうです」と答えた。こんな状況下でも演劇がやりたいんだ、僕たちは


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