私たちは地下にある大きな練習室の真ん中のとても小さく区切った舞台の上で、七時間にわたって、鯨にまつわる極めて短い死体化生神話を再演し続けます。それはどこかの地域の生活のように、起きて湯を沸かし、歯を磨き、お茶を入れ、食事を作り、眠り、etc. 繰り返し、いつかは死んで、次の世代へ伝わっていく口承神話。
遠くから眺めてもいいですし、置いてある本を読んでもいいですし、三十分程の滞在でも、昼から晩まで居るのだって、神話を口にするのも大歓迎。
短い神話の長い再演の中、何が変わっていき、何が残るのかは、僕たちにもわからないから、このお誘いの文章を形に出来ないまま、1月24日の締め切りを迎えました。正確にはもう深夜、25日の始まり。マジでごめんなさい。
でもさ、演劇って、表現って、作品と観客の間に存在すると思っているから、本番迎えないとどうなるかわかんなくて誘いづらいよね。「笑える作品です！」とか言っても、感情は知識と経験に基づいて発露されるから、みんなに当てはまるわけじゃ無いじゃない？稽古場必笑のギャグでも観客沈思黙考された日には「ああ俺は大きな嘘をついてしまった」と眠れなくなっちゃう。
嘘つきにならない広報しようとしたら、「すげー頑張ってます」とか自分たちの努力過程を伝える羽目になるんですよ。つまらなそうな広報ってこうして生まれるんです。今まさに、ここで生まれている。
大いに困っているので、少しだけ演出の下敷きにした場所の話をします。
ベトナム中央高原からラオス、カンボジア、タイ、ミャンマーの四ヶ国を跨ぎインド北東部に、中国南部の四省を含む広大な山塊地帯は、チベット・ビルマ語において「山地民」を指す言葉「ゾミ」に土地の性質を与えるラテン語の接尾辞-iaを加えた造語の「ゾミア」と呼ばれている。
土地のように扱われる「ゾミア」だが、国ごとに色分けされた世界地図の中に見出すことは難しい。山地は、平地を基盤とした国家の空間ではなく、標高を基準とした等高線により分類される垂直の空間だからだ。
長らく国家に取り込まれなかったこの空間には、多様な山地民が生活してきた。
彼らの多くは、文字や定住農法を持たないために平地より文明の遅れた存在だとされて来たが、その「野蛮さ」つまり山地民の営む生活は、狩猟採集と焼畑農業で栽培される芋により成り立っていて、どちらも移動を基本として生活実態の把握が難しい上に、芋の収穫時期はまばらで、成長の度合いも一見して分からないから、国家による徴税や、労使を躱す戦略だったのでは無いかと仮説を立てた人がいる。
『荒野へ』で作家ジョン・クラカワーが描いた、紙幣を焼き捨てアラスカを目指した青年や、現代アメリカの資本主義社会から逃れ続け、砂漠や洞窟で生活する人たちを撮り続けた写真家アレック・ソスのプロジェクト『ブロークン・マニュアル』に出口を与えうるその仮説は、演劇脚本の、文字に支配されがちな国家的要素を「剥ぎ取れるんじゃ無いか」と思わせる程に魅力的で、私たちも舞台の上に七時間「ゾミア」をつくることにしました。げへへ
melomys「hallucination くじら」
鯨に至る旅で、わたし／わたしたちは幾つかの記憶を振り返るだろう。
作・構成・演出
野村れお、内田龍太郎
出演
田崎小春、やわらあさ（演劇関係いすと校舎）、木村佳南子（非・売れ線系ビーナス）、 风月（非・売れ線系ビーナス）、ハットリユウ
公演日時
①2024年2月9日（金） 14:00～21:00
②2024年2月10日（土） 14:00～21:00
③2024年2月11日（日） 13:00～ 20:00
※開場は開演の30分前
会場
パピオビールーム 大練習室
【チケット料金】
1日チケット： 前売2,000円（当日2,500円）
3日間free pass：3,000円
＊キビる割：200円引（1日チケット対象）
＊高校生以下無料（未就学児入場歓迎）
※各回入退場自由（再入場可）
【チケット取扱】
ローソンチケット（Lコード：83150）
melomys
2020年に田崎小春が立ち上げた創作ユニット。あやふやなものをあやふやなまま、いなくなったものをいないままに、切り取られた輪郭の再構築を試みる。2020年11月 映像作品『i am,you are』発表。2021年一人芝居『present』福岡・横浜にて上演。2021年10月、豊かさとは何かについて考え、行動と検証を重ねる【エシカルシアタープロジェクト】を始動。
公演に関するお問合せ：melomys
【E-mail】melomys1113@gmail.com
【X】 @melomys1
キビるフェス2024
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