【第625回】安田雅弘(劇団 山の手事情社 主宰)

講師:安田雅弘(劇団 山の手事情社 主宰)


2月のワークショップに思うこと


 はじめまして。

 2月の6日(日)、7日(月)に「キビるフェス~福岡きびる舞台芸術祭~」の「俳優ワークショップ」で講師をつとめさせていただく安田と申します。宜しくお願いいたします。

 福岡で演劇ワークショップを実施するのは、数十年ぶりなので、ほぼ初めてです。

 「どんな内容がいいでしょう?」と担当の仁田野さんとお打合せをして、今回の内容になりました。

 つまり「基礎」です。3回で「発声」「身体を知る」「ダンスや漫才をやってみる」と毎回違う内容をお伝えし、3回とも参加者の皆さんどうしで相談して、寸劇を作っていただこうと思います。寸劇づくりの稽古を《ショート・ストーリーズ》と呼びます。

 のちほど説明します。

 「基礎なんてめんどくさい」「とっとと芝居つくろうよ」という声もあるかもしれません。その気持は私にもようくわかります。では「基礎」はなぜ必要なのか。それはジャンプするためです。俳優として飛躍するためです。基礎をしっかりやっておくと、ある日「化け」る。見違えたように魅力的で自信に満ちあふれた俳優になります。基礎がないと、まず「化け」ません。参加者のみなさんに今後長いあいだ演劇を楽しんでいただく上で、今回は基礎の部分をお伝えしようと思います。むろん1回で基礎などできあがりませんから、練習する上でのコツをお伝えします。

 《ショート・ストーリーズ》では身近なドラマを再現します。どうしても「お笑い」に走る傾向が強いのですが、ここでは「深刻」で「切実」なドラマを探ります。ふだんあまり直視しようとしていない深刻で切実な事態が必ず身の回りにあるはずです。それをできるだけ等身大の演技で、つまりあえて自分自身とは違う年齢やキャラクターにならずに、その状況に置かれたら自分はどう行動し発言するのか、を考えるトレーニングです。安易なオチはいりません。もやもやしたまま解決せずに終わっても構わない。自分の周囲にどんなドラマがあるのか、そのセンサーを磨く訓練だと考えてください。そのセンサーは戯曲を読んだり芝居を作ったりして行く上で極めて重要な感覚です。俳優の武器になります。

 今回は演劇をやる上でのいわば本質的な入口です。ご都合が合うようでしたら、ぜひ覗いてみてください。


『山の手めそっど寄席』の《漫才》

(左から川村 岳・越谷真美)/写真:平松俊之



『山の手めそっど寄席』の《ショート・ストーリーズ》

(左から川村 岳・安部みはる・谷 洋介)/写真:平松俊之



福岡きびる舞台芸術祭 キビるーこ結びー

俳優ワークショップ

俳優活動をしている中で、一度基礎を学んでみたい、自分の課題を知って向上したい、と思っている方へ向けて開催!

独自に開発・アレンジした俳優養成法《山の手メソッド》をもつ「劇団 山の手事情社」の安田雅弘さんを講師に迎えます。

3回にわたるプログラムでは、回ごとに異なるテーマのワークショップと合わせて、自分たちで考えて寸劇を作る《ショート・ストーリーズ》を実施。自分の周りにあるドラマを徹底的に見つめる力と、リアリティをもたせて演じる感性を養います。


【日時・内容】

第一回:2022年2月6日(日)17:00〜22:00/ゆめアール大橋 大練習室

●発声方法を知る。声を出してみる。

●《ショート・ストーリーズ》づくりと発表①


第二回:2022年2月7日(月)10:00〜15:00/ぽんプラザホール

●身体について考えてみる。

●《ショート・ストーリーズ》づくりと発表②


第三回:2022年2月7日(月)17:00〜22:00/ぽんプラザホール

●ダンスを作ってみる。

●漫才をやってみる。


●《ショート・ストーリーズ》づくりと発表③

※複数回の参加推奨ですが、3回連続講座ではありませんので、1回のみの参加可能です。必要に応じてお申し込みください。


【対象】

18才以上で俳優活動をおこなっている人

【参加費】

1回:2,000円

3回通し:5,000円

【定員】

各回20名(先着順)

【お申込み】

下記予約フォームよりお申込みください。定員に達し次第締め切りとなります。

https://forms.gle/2J7hND37xPqpnDS18


講師:安田 雅弘(やすだ まさひろ)

演出家、劇団 山の手事情社主宰。

1962年、東京生まれ。早稲田大学卒業。

1984年、劇団 山の手事情社を結成。「演劇とは劇場体験にほかならない。劇場体験とは、つくり手の持つ抽象的なイメージを生理的に体感することである。その体験のためにすべての演劇的要素は奉仕すべきである。」という理念にもとづき、〈演劇の現代詩〉とも形容される独自の舞台作品を発表しつづけている。

1997年ころより「現代日本人の精神性を、矛盾をかかえた身体の制限された動きによって表現する」《四畳半》という様式の試みを展開させながら、独自の演技・演出法を貫く先鋭的な劇団として注目されるようになり、国内だけでなく、海外での評価も高まっている。

また、<演劇的教養>の敷衍にも力を注いでおり、多数の委嘱公演の演出、全国でさまざまなワークショップの講師、全国高等学校演劇大会・同地方大会などコンクールの審査員をつとめている。

2013 年、ルーマニアのシビウ国際演劇祭で「特別功労賞」を受賞。

近年の主な外部活動は、静岡県舞台芸術センターSPACの委嘱で『走れメロス』を演出(2009年、2011年、2014年)。ルーマニア国立ラドゥ・スタンカ劇場の委嘱で『女殺油地獄[A JAPANESE STORY]』(原作:近松門左衛門)を演出(2012年)。本作は国立ラドゥ・スタンカ劇場のレパートリー作品となり、年間を通じて上演されている。フランス国立高等演劇学校コンセルヴァトワールでマスタークラスのワークショップの依頼を受け、実施(2012年)。

桜美林大学非常勤講師。

「演劇ぶっく」誌上に「演劇の正しい作り方」を長期連載。「テアトロ」誌、「週刊朝日」誌、「TARZAN」誌、「B-ing」誌、「カルチャー・ポケット」誌など連載実績も多数。著書に「ハッピーなからだ」(洋泉社刊)、『魅せる自分のつくりかた』(講談社選書メチエ刊)。


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