【第484回】五味伸之(空間再生事業 劇団GIGA所属。俳優・演出。)

「物語を自分の物語にする」

福岡の街にいる謎の人物"犬神博士"が語る子供の頃のお話。血の繋がらない両親と旅芸人をしながら暮らす犬神博士は、子供の頃"チイ"と呼ばれる美少年だった。女の子の格好をして、猥雑な身振りで踊って日銭を稼ぎ、稼いだお金は全部両親に吸い取られる。両親のストレスの捌け口として、殴られ地べたに頭を擦りつけて謝り、気まぐれの優しさを大事に一生懸命生きている。権力も性的観念も全部ワヤになって、味噌っ歯でゴリゴリキューキュー飯を食べる。

お話の中で、たくさんの人に出会って、演者の僕はたくさんの人物の役を演じて、その人の言葉を声に出します。そうすると、その役の目線の物語が自分のことのように感じられます。何ででしょうね。文字だけの世界から、その時の景色や人と人との位置関係までも分かってきます。不思議ですよね。

夢野久作の探偵小説の定義に"目の前にないものが、あるように感じられる"ということがあります。脳みそが自分の脳みその不思議を追いかけてる感じですね。

2月の朗読劇は、灯を暗くして、声と音をたっぷりと楽しむことができます。時代も場所も飛び回る脳みその探偵劇にぜひお越しください。

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五味伸之

空間再生事業 劇団GIGA所属。俳優・演出。

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