【第720回】 高野桂子&松永琳太郎(ぷいはや!)

PUYEYの活動拠点は福岡市だが、福岡市内で公演やイベントを開催しようとすると、

毎回会場選びに苦労する。

稽古などでお世話になった青年センターは2016年、旗揚げ公演で使わせていただいた

FUCAは2017年、そして何度もお世話になったSRギャラリーは2023年に閉館した。


ぽんプラザホールの需要が高まり、7日間利用で申請しないと抽選に参加できない。

小規模な団体やイベントでは手が出せない状況だ。

福岡で演劇活動を始めて17年、PUYEYを結成して9年目の私たちでさえこんなに

苦労するのだから、演劇を始めたばかりの方や若手劇団の苦労は容易に想像できる。


そういった状況の中で今回のコラボレーションは実現した。

才能溢れる若手劇団、ギムレットには早すぎるの皆さんに声をかけ

「場」「人」「資源」などなどを共有することで、

お互いのプラスになるしお客さんにも多様なプログラムを楽しんで

いただけるのではないかと思う。


今回も会場にはかなり悩み、空き状況・料金・立地など色々考えていたところに

ギムレットには早すぎるの村岡くんがmozartbaseの存在を教えてくれた。

今月グランドオープンするこのアートスペースは、キャパ40人程度で音響照明設備も

整っており、六本松からバスで10分という立地だ。料金も良心的。


本当は教えたくないくらいだが、悩める福岡のアーティストの皆さんにおすすめ。

今後もこういったコラボレーション企画はやっていきたい。

力を貸してくれる団体や、貸してほしい人がいたら、声をかけて欲しい。

アーティストは知恵を絞り汗をかき、そして時にはこうやって力を合わせ、

表現の場を守っていくしかない。それは結構痛快で、愉しい作業だ。


PUYEY代表 高野桂子



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思えば、PUYEYとの出会いは2016年、高校2年生の時でした。

当時私は演劇部に所属していて、PUYEYのお二人がワークショップを行いに

部室まで来てくださいました。

福岡で本気で演劇をやっているお兄さんお姉さん方というものを初めて拝見した場で

あったので、当時の印象としては、もしかすると自分の近い未来は

こうなっているのかもしれないという一種の鏡を見ているような感覚でした。


同日の思い出として特に印象に残っていることがひとつあります。

当時の演劇部員とPUYEY共に初対面であったため、最初に全員で自己紹介をしようと

いうくだりがありました。


部員全員の自己紹介が終わった後に流れで顧問も自己紹介することになり、

顧問「大学まで演劇をやっていましたが才能がないことに気づき、」

高野「えらい…」

顧問「でも演劇には触れていたいので演劇部顧問になるために教師になりました。

よろしくお願いします。」


この合いの手のように溢れ出てきた高野さんの「えらい…」という一言に

筆舌に尽くしがたい重みを感じたことが未だに強く印象に残っています。


なんというか覚悟というか責任というか、演劇を生業にすることに対する

そういったものを子どもながらにビシビシ感じ、

なんとなく自分の近い未来と重ねていたことをおこがましく感じました。


8年前の思い出ですが昨日のことのように憶えています。

そんなお兄さんお姉さんと同じ舞台・同じ枠組みで創作ができることを

大変感慨深く感じています。


私は今年度で修士課程を修了し、来年度から就職して福岡を離れ、

演劇からも今よりは距離を置くことになると思います。

私は演劇を生業とするような覚悟はできませんでした。才能もないですし。

この判断が「えらい」のかそうでないのかは未来になってみないとわかりませんが、

まずは今を、人より長かった学生最後の一年を、できる限り楽しみたいと思っています。


ギムレットには早すぎる 松永琳太郎



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