【第471回】梅木小猿(博多仁和加)

小説「犬神博士」における博多言葉について。

郷土出身の作家夢野久作の作品「犬神博士」は舞台が福岡市と直方市になっているので博多言葉が多く出てくるのではないかと期待したが、意外に少ない。九州周辺を巡業して回るので已むを得ないのだろう。そこで博多言葉が出てくるのは、トンボ姐さんがチイの芸に魅了されて語る箇所があるので抜粋して羅列してみる。(角川文庫九十頁)

=まぁ聞いちゃってんなざい。この頃この子供の踊りがあなたァ博多中の大評判だっしょうが。おらぁ知らざったぞ。イヤラッサナァ。知んなざれんと、中券の芸妓でもアレだけ踊り切る者なぁなかちゅうて、言いよりますっちゃが。何かしりまっせんバッテ、それがチョット言われんわけのありますったい。この子の親が出てきたら渡すかどうか。ヘェーそらぁ渡しまっせにゃあこて。=まだありますが紙面の都合でこの位にしておきます。

チイの男親(女親はわかりませんが)は旅芸人をする前は上方で修行をしていたらしく上方弁である。その影響でチイの言葉も上方弁である。また筑豊弁もほとんど出てこない様に思われるが、さすが夢野久作の作品は言葉に関係なく引き込まれていく様です。

執筆者

梅木小猿(博多仁和加)

夢野久作劇場「犬神博士」の全ての回のオープニングで、博多仁和加を務める。

0コメント

  • 1000 / 1000