【第473回】石田聖也(演劇ユニットそめごころ 劇作家/演出家)

「速度の兎と全部したい亀」

 現在、日本の戯曲セミナーin福岡の真っ只中でして、頭の中は寺山修司でぎゅうぎゅうパンパンな日々を過ごしております。ヴィデオアンソロジーの上映で寺山さんのインタビュー映像なんかを観ていると、自分でも気がつかないうちに影響を受けていることも多くて驚きです。映画/演劇/ラジオドラマ/詩/競馬などなど、多くの才能を持ち、本当に一人の人間がこれだけのことをやってのけたのか?と疑いたくなります。

 あ、おそらく僕が一番妬ましいのは寺山修司の「速度」なんです。作品を発表する速度、新しいモノを自分の中に入れる速度、人と関係する速度、その速度があれだけの仕事を可能にしてるような気がして。それに対して「兎と亀」でいうところ僕はゆっくり歩く亀。ゆっくりゆっくりしか歩けない。ちょっと急ごうもんならすぐに息切れおこして動けなくなる。でも、寺山修司という兎は居眠りもせず、ゴールテープなんか見向きもせず、走り続けてドンドンドンドン遠くへ。今の僕には後姿も見えやしないわけです。

 そのくせ亀にもやりたいことは山ほどあって。劇作/演出、古典近代現代劇、小劇場も商業も能も歌舞伎もミュージカルも人形劇もお遊戯会もなにもかも。今の自分がやれてることなんてやりたいことの一握り、、、。妬ましいって言ったけど、この感情はおそらく憧れではないかなぁ。

 そんな感じでまぁ、、、ぎゅうぎゅうパンパンな亀もチャレンジしないと歩いていけないので、1月は長崎の諫早にある独楽劇場で演劇のイベントをさせていただきます。(急な告知w)宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をモチーフにした演劇イベント『ケンタウル祭の夜』です。1月19日の16:00~22:00の間に朗読劇や観客の記憶から演劇をその場で作る「ききがたり」など盛りだくさんです。劇場にBARがあって駄菓子食べ放題なので、普通に飲みに来てもらっても大丈夫ですし、「場」との関わり方はお客さんにおまかせします。ジョバンニが銀河鉄道で旅したように、現実の生きづらさから離れ、ただあなたがそこに「いる」ことを肯定できる場所と時間を演劇で。

演劇ユニットそめごころ 劇作家/演出家 石田聖也 


 

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