「都市を遠く離れて」
奈良の山奥でこの文章を書き始める。天川村にある築100年を越す日本家屋。ここには毎夏、日本全国様々な地域から俳優が集い、一週間山での共同生活をしながら演出家と共に作品創作をおこなっている。今日で5日目、二日後にはショーイングが迫っている。8月でも昼間は山を通り抜ける風が涼しく、夜から明け方にかけては長袖がないと逆に寒いくらいだ。都市から遠く離れたこの場所には、新たな出会いと創作に集中できる環境が整い、心のゆとりが回復していくのを感じている。都市から遠く離れている今現在、出会うモノ、回復していく私自身について、立ち止まって考えてみたい。
普段の私と、山での生活の根本的な違いは、選択肢の幅だ。ココでは人間の顔が良く見える。そして対話のゆとりを許してくれる、ゆったりと流れる時間がある。多くの人間や、娯楽、選択肢に囲まれて生活していると、常に選択を迫られているような感触があった。当然全部できるわけではないし、選ばなければならないわけだが、選べずにズルズル過ごしたりもした。そんな時は大抵、まだ他にやり残したことがあるはず、まだやらねばならぬことがあるはずという、といったある意味強迫観念にかられ、追われ、気がつけば一日が終わっている。時はあっという間に流れ、悪い時には心と身体が引き裂かれるような感覚に陥る。おそらく不安、或いは恐怖というやつだ。けれど、ココでは規則正しく生活をして、演劇をするしかないのだ。便利であるということは、いろんなことに手が届く、という面もあるがそれと同時に、無数にある選択肢に縛られている、とも言える。その点、今私の置かれている状況はシンプルだ。仲間と食事を取り、語り合い、身体を動かし、作品を創る。近年、SNSをはじめオンラインミーティングなどの普及により、どこでも人と繋がれるということが一般化されているが、それが結果として私を窮屈にしている。とはいえ、そんなことはココで改めて言うことでもないが、実際問題、一度そのシステムの中に組み込まれてしまったら、そことの関係を断つことは難しい。だからこそ半強制的に都市を離れ、本質的に物事と対峙する経験、シンプルな生活が今の私には必要だったのだと思う。
都市と適度な距離を保ち、顔の見えない不特定多数の中で個人としてのみ生きるか、特定多数、或いは特定少数の共同体、緩やかな人との繋がりを保ちながら生きることを選ぶか。そんなことを考えている。劇場は重要な社会の場であり、観客とは特定多数の共同体である。新型コロナウイルスによって、世界中で共同体から引き剥がされた沢山の個人が他者と距離を取りながら生活するような世界観の中で私たちは生きている。不要不急などではなく、演劇という場が、劇場が人間の生きるのに必要な機能であると、私はいまいちど強調したいと思う。
2021.8.16
新しい市民演劇ぷろじぇくと『あるものないもの』参加者募集中!
2021年11月、四箇田団地に新しい地域交流センター、「ともてらす早良」がオープンします。
そのオープニングイベントで “市民参加型演劇” を発表するプロジェクトが動き出しました。
中核をなすのは、福岡市内外で活動する「演劇ユニットそめごころ」のメンバー。
彼らと一緒に、からだであそび、みえないものと出会ってみませんか?
〈募集内容〉
「ともてらす早良」開館式典において、「演劇ユニットそめごころ」と共に演劇作品をつくり、発表する仲間を募集します。
★出演者:お芝居に出て、表現することに興味のある方
★裏方スタッフ:大道具・小道具・衣装を作ったり、音響・照明を動かしたいな という方
★その他:チームをお手伝いしてくれる方。関わり方は募集中。
※経験の有無は問いません。興味があれば説明会を開催しますので、下記連絡先までご連絡ください。
〈参加資格〉
・中学生以上を対象とします。
・参加費:無料
・参加への報酬はありません。交通費は自己負担となります。
※早良区にお住まいでなくとも、ご参加いただけます。
〈公演日〉
2021年11月6日(土)、7日(日) (時間未定)
場所:ともてらす早良(福岡市早良南地域交流センター)
(福岡市早良区四箇田団地9番1号)
〈稽古日〉
9月以降、週3回程度。
月・水/18:00〜21:00
日/ 13:00〜18:00
参加申し込み・お問合せ先
ともてらす早良(早良南地域交流センター)
メール:kimurarie@amcf.jp
「お名前」「興味を持ったきっかけ」「電話番号」をお知らせください。
説明会についてご連絡を差し上げます。
電話:092-812-3312
住所:福岡市早良区四箇田団地9番1号
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